ひてん
Hiten (MUSES-A)
ミッションの解説
概要
「ひてん (MUSES-A)」は、月探査技術の実証のために宇宙科学研究所 (ISAS) によって開発された探査機です。その主な目的は、以下の通りです。
- フォールトトレラントなオンボードコンピュータとパケットテレメトリの実験
- 地球-月間のエアロブレーキング実験
- 微小隕石粒子の質量と速度の検出と測定
1990年1月24日に鹿児島宇宙センターから打ち上げられ、 1991年3月末までに、主要なミッションをすべて成功裏に完了し、世界初の地球-月間エアロブレーキング実験を2回実施しました。 その後、以下の追加ミッションも達成されました。
- 地球-月系のラグランジュ点 (L4 および L5) への探査
- 「ひてん」探査機自体の月周回軌道への投入
- 月面へのハードランディング
1993年4月10日18時08分45秒 (UTC) に、「ひてん」からのすべてのテレメトリが停止し、探査機は月面の東経55.6度、南緯34.3度の地点、フレネリウス・クレーター付近に衝突したと推定されました。
探査機の大きさは直径 1.4 m、高さ 0.8 m の円筒形で、上面に、対面寸法 40 cm の 26 面体の月周回孫衛星「はごろも」を搭載しており、打ち上げ時の質量は 197 kg (うち 42 kg はヒドラジン燃料、12 kg は月周回機「はごろも」) でした。 探査機は 20 rpm でスピン安定化されており、そのスピン軸は常に黄道面に対してほぼ垂直に保たれていました。
DARTS では、「ひてん」の生テレメトリデータと起動データをアーカイブしています。データ処理ソフトや解析ソフトはアーカイブ化されていないため、科学的なデータ解析はサポートできない可能性があります。
観測装置について
Dust Counter (MDC)
Dust Counter (MDC) は、ひてんに搭載された微小粒子検出装置です。この装置は、宇宙空間に存在する微小な塵や粒子を検出するために設計されました。MDCは、粒子がセンサーに衝突した際に発生する電気信号を測定することで、粒子の数や大きさを特定します。測定に用いる波長や帯域は特定されていませんが、粒子の衝突による電気信号を検出する原理に基づいています。
MDCの観測能力は、微小な塵や粒子の分布や密度を高精度で測定することができ、これにより月周辺の空間環境の理解が深まりました。
Optical Navigation System (world-first for a spin-stabilizing satellite)
Optical Navigation Systemは、ひてんが世界で初めてスピン安定化衛星に搭載した光学ナビゲーションシステムです。このシステムは、地球や月の画像を撮影し、その位置を特定することで、衛星の軌道を正確に制御するために使用されました。
このシステムは、カメラと画像処理装置から構成されており、撮影された画像を解析することで、衛星の位置や速度を高精度で測定します。光学ナビゲーションシステムの観測能力は、衛星の軌道制御を高精度で行うことができ、ミッションの成功に大きく貢献しました。
得られた成果
「ひてん」は、世界初の地球-月間エアロブレーキング実験を成功させ、微小隕石粒子の質量と速度のデータを収集しました。また、地球-月系のラグランジュ点への探査や月周回軌道への投入、月面へのハードランディングなど、多くの成果を上げました。これにより、日本の宇宙探査技術の向上に大きく貢献しました。