きょっこう
Kyokko (EXOS-A)
ミッションの解説
概要
「きょっこう (EXOS-A)」は、宇宙プラズマの密度・温度・組成の観測、オーロラ電子のエネルギー・スペクトルの研究およびオーロラの紫外線撮像と、国際磁気圏観測計画 (IMS) への参加を目的として、東京大学宇宙航空研究所(現:宇宙科学研究所)によって開発されたオーロラ観測衛星です。 1978年2月4日に鹿児島宇宙空間観測所 (現:内之浦宇宙空間観測所) からM-3Hロケット2号機によって打ち上げられ、1992年8月2日に運用を終了しました。
重量 126 kg、直径 95 cm、高さ 80 cm の円筒形で、近地点高度 630 km、遠地点高度 3,970 km、傾斜角 65 度の準極軌道(楕円軌道)を、1 周 134 分の速さで周回しました。
DARTS では、「きょっこう」の生テレメトリデータと起動データをアーカイブしています。データ処理ソフトや解析ソフトはアーカイブ化されていないため、科学的なデータ解析はサポートできない可能性があります。
観測装置について
UV Auroral Television Camera (ATV)
ATV は、紫外線領域 (1300A) でオーロラを撮像する装置です。 スロースキャン読み出し式のイメージメモリー管、光電面は臭化カリウムで、フッ化マグネシウムの面板により 130 nm 付近の光子に感度がありました。画像フレームの画素数は 178 x 198 で、カメラの視野は 60 度で、衛星が北極上空にあるとき、128 秒ごとにオーロラパターンを測定しました。 これは世界で初めて紫外線によるオーロラ撮像を実現した装置であり、オーロラ出現時の上空におけるプラズマの乱れと強い電磁波の放射を発見することができました。
Electron Energy Spectrometer (ESP)
ESP は、オーロラ電子のエネルギー・スペクトルを測定する装置です。 2つの球形静電アナライザーで構成され、1つは宇宙船の前部に、もう1つは後部に取り付けられ、磁力線方向 upward flux と downward flux を同時に計測します。 それぞれのアナライザーは 4.5 eV から 11.3 keV のエネルギー範囲を 9 つのエネルギーチャンネルでカバーしました。 この装置は、電子のエネルギー分布を詳細に解析することで、オーロラ発生時の電子の挙動を理解するために使用されます。
Atmospheric UV Glow Spectrometer (AUV)
AUV は、大気の紫外線発光を観測するための分光計です。 分解能 1 nm の回折格子分光器と振動スリットで構成されています。スペクトルは、30.4 nm (He<sup>+</sup>)、58.4 nm (He)、83.3 nm (O<sup>+</sup>)、121.6 nm (H, Lyman-α)、130.4 nm (O) のスペクトル線を中心に、プラスマイナス 1.5 nm のバンド幅でスキャンされ、各スペクトル線に対して 1 つずつ、計 5 つのチャンネルマルチプライヤーを用いて強度を測定しました。 この装置は、特定の波長帯域での紫外線発光を測定し、大気中の成分やその変動を解析することができます。
Ion Mass Spectrometer (MSP)
MSP は、宇宙プラズマ中のイオンの質量を測定する装置です。 1 - 4 および 14 - 16 原子質量単位の上層大気正イオンを測定するもので、四重極マスフィルターとチャンネル電子増倍管で構成されていました。イオン注入口は機体の前方端にありました。 この装置は、イオンの質量とその分布を解析することで、プラズマの組成や動態を理解するために使用されます。
Plasma Wave Experiment (ESW)
ESW は、プラズマ中の電磁波を観測する装置です。 静電波を拾うために 2 つのファラデーカップが、電波を受信するためにダイポールアンテナが使用されました。 ダイポールアンテナは、長さ 1.9 m の 2 本の細いワイヤーで構成され、伸縮可能な安定ブームに沿うように取り付けられました。 ファラデーカップは、ひとつはスピン軸に平行に、もう一方はスピン軸に垂直に取り付けられました。 0.4 - 30 kHz の波が広帯域受信機で受信され、0.045 - 3 MHz の波は 11 バンドで測定されました。 この装置は、プラズマ波動の特性を解析し、プラズマ環境の理解を深めるために使用されます。
Langmuir Electron Probe (NEL)
NEL は、プラズマ中の電子密度と温度を測定するための装置です。この装置は、電子の密度と温度をリアルタイムで測定し、プラズマの状態を詳細に解析することができます。
Electron Temperature Probe (TEL)
TEL は、プラズマ中の電子温度を測定する装置です。この装置は、電子の温度分布を詳細に解析し、プラズマのエネルギー状態を理解するために使用されます。
得られた成果
「きょっこう」は、紫外線によるオーロラ撮像を世界で初めて実現し、オーロラ出現時の上空におけるプラズマの乱れと強い電磁波の放射を発見しました。この観測結果は、オーロラの発生メカニズムや宇宙プラズマの特性を理解する上で重要な成果となりました。