MAXI
Monitor of All-sky X-ray Image (MAXI) on JEM-EF
ミッションの解説
概要
全天X線監視装置MAXI(Monitor of All-sky X-ray Image)は、2009年8月に国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられた日本の装置です。ミッションの目的は、全天のX線を監視し、突発的なX線現象や新しいX線源の発見を行うことです。MAXIは、理化学研究所(理研)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とした大学やその他の研究機関からなるチームによって運用されています。
観測装置について
MAXIは、スリットカメラと1次元位置検出を用いた観測原理に基づいて設計されています。スリットカメラは、特定の方向から入射するX線をスリットを通して検出器に導き、1次元位置検出器でその位置を測定することで、X線源の位置を特定します。
GSC (Gas Slit Camera)
ガススリットカメラ(GSC)は、大面積のXeガス比例計数管を用いており、2-20 keVのエネルギー帯でX線を検出します。この装置は、92分に一回全天の60%以上、1日でほぼ全天(90%以上)をスキャンする能力を持っています。GSCは、広いエネルギー帯域での高感度な観測が可能であり、突発的なX線現象の迅速な検出に寄与しています。
SSC (Solid-state Slit Camera)
ソリッドステートスリットカメラ(SSC)はX線CCDを用いており、0.7-7 keVのエネルギー帯でX線を検出します。SSCは、GSCに比べて観測範囲は狭いものの、約20%の天域をスキャンすることができます。SSCは比較的高いエネルギー分解能を持ち、明るい点源や、天球上に広がる拡散X線放射の分光観測が可能です。
成果
MAXI/GSCは、リアルタイムでデータを地上に送信し、突発的なX線現象を迅速に検出する能力を備えています。JAXA筑波宇宙センターでは、MAXIの突発天体発見システムがデータを監視し、未知の天体の出現や既知の天体の予期せぬ変動があると、電子メールやGCN(ガンマ線バースト連携ネットワーク)、ATel(天文学者電報)を通じて新星情報を発信する仕組みが整っています。このシステムにより、世界中の望遠鏡が協力してフォローアップ観測を行う体制が整いました。これにより、高密度星のアウトバースト(爆発的な活動)の詳細な観測が可能となり、数十日から数百日にわたるその活動の全体像が明らかになりました。近年では、ISS上に突発天体発見システムを設置し、NASAのNICER X線望遠鏡と軌道上で直接連携するOHMAN実験(On-Orbit Hookup of MAXI and NICER)により、最短2分程度の速さでフォローアップ観測が可能な体制が構築されています。
また、MAXIの広い視野を活かして、15年間にわたる数百個の天体の光度変化が継続的に観測され、それらのデータが理研から公開されています。さらに、MAXI/SSCの高エネルギー分解能を活用して作成された軟X線全天マップにより、天球上におけるその分布がより詳細に示されました。