すいせい
Suisei (PLANET-A)
ミッションの解説
概要
「すいせい (PLANET-A)」は、76年ぶりに回帰するハレー彗星の観測を目的とした国際協力探査計画への参加を目的とし、「さきがけ (MS-T5)」とともに、宇宙科学研究所 (ISAS) によって開発された探査機です。 1985年8月18日に鹿児島宇宙空間観測所(現:内之浦宇宙空間観測所)から M-3SII ロケットによって打ち上げられ、11月14日にハレー彗星に向けての軌道修正を行い、1986年3月8日、ハレー彗星の太陽に面した側の 151,000 km まで接近しました。先行して打ち上げられていた「さきがけ」や、旧ソ連科学アカデミーの Vega 1号・2号、欧州宇宙機関の Giotto、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の ISEE (ICE) と協力してハレー彗星の観測を行い、これら 6 機の探査機群は、「ハレー艦隊 (Halley Armada)」と称されました。 その後も太陽風の観測を続けていましたが、1991年2月22日に軌道修正を行うための燃料のヒドラジンが尽き、1992年8月20日、地球スイングバイを実施して運用を終了しました。
衛星は、質量 140 kg、直径 1.4 m、高さ 0.7 m の円筒形で、上部に 0.8 m 径の楕円形高利得アンテナを備えていました。地球の重力圏を離れ、ハレー彗星に接近する太陽周回軌道を、1周約 282日の速さで周回しました。
観測装置について
Ultraviolet imager (UVI)
UVI は、紫外線帯域での観測を行う装置です。この装置は、ハレー彗星のコマと尾から放出される紫外線を捉えるために設計されました。 真空紫外望遠鏡ミラーレンズ、紫外イメージインテンシファイア、122 × 153 ピクセルの CCD 検出器から構成され、視野角は 1.85 × 1.96 度、測光だけでなく撮像も可能です。 CCDは放射冷却方式で冷却され、撮像中に探査機の自転運動による画像のブレを避けるため、スピンシンクロシフトモードで駆動されます。 UVI は、紫外線の特定の波長を測定することで、彗星のガス成分やダストの分布を解析します。観測能力としては、紫外線の強度と分布を高精度で測定することが可能です。
Energy analyser of charged particles (ESP)
ESP は、ハレー彗星周辺の荷電粒子のエネルギーを解析する装置です。この装置は、彗星の尾やコマに含まれるイオンや電子のエネルギースペクトルを測定するために使用されます。 センサーは、5 × 60 度の視野を持つ扇形のコリメーターと、5 つの陽極を持つマイクロチャンネルプレートを備えた 270 度の球形静電アナライザーで構成されています。 観測可能なエネルギー範囲は 30 eV/q から 16 keV/q までの 96 段階で、それらは対数スケールで等間隔に配置されており、エネルギー分解能は ΔE/E = 0.06 です。 ESP は、荷電粒子が持つエネルギーを検出し、その分布を解析することで、彗星の物理的特性や太陽風との相互作用を明らかにします。
得られた成果
「すいせい」は、ハレー彗星の詳細な観測データを提供し、彗星のガス成分やダストの分布、荷電粒子のエネルギースペクトルに関する貴重な情報を得ることができました。これにより、彗星の物理的特性や太陽風との相互作用についての理解が深まりました。特に、紫外線観測によって得られたデータは、彗星のガス成分の解析に大きく貢献しました。