TRACE
Transition Region and Coronal Explorer (TRACE)
ミッションの解説
概要
TRACE(Transition Region and Coronal Explorer)は、太陽のコロナや遷移領域を詳細に観測するために設計されたNASAの太陽観測衛星です。1998年4月2日に打ち上げられ、2010年6月21日に観測を終了しました。TRACEの主な目的は、太陽の大気であるコロナと遷移領域で発生する様々な物理現象の観測を通じて、太陽の活動やその影響を理解することです。このミッションは、多くの高解像度画像とデータを提供し、太陽のダイナミクスについての理解を深めました。
TRACEは小型の衛星で、全長約1.6 m、重量約250 kg です。近地点高度 600 km、遠地点高度 650 km、傾斜角 97.8 度の太陽同期極軌道に配置され、1周 96 分の速さで周回しました。ミッションの研究主体はNASAのゴダード宇宙飛行センターとロッキード・マーティンのリンダースクリーク研究所です。
観測装置について
TRACEには主要な観測装置が一つ搭載されています。
TRACE Telescope
TRACEに搭載されている望遠鏡は、長さ1.6m、口径30cmのカセグレン式。望遠鏡の視野は8.5×8.5分角、空間分解能は1秒角です。光は1024×1024素子のCCD検出器(0.5秒角/ピクセル)に集光されます。観測の露光時間は2ミリ秒から260秒です。
可視光から極紫外線までの波長範囲 (17.1 nm、19.5 nm、28.4 nm、および白色光: 500 nm) を観測できます。
撮像用CCDカメラと特殊なフィルターを組み合わせたシステムを用いています。これにより、コロナと彩層の構造を高解像度で撮影することができます。このカメラシステムは時間変化を観測するための短時間露光が可能なため、太陽フレアなどの動的な現象の詳細な観測が可能です。
得られた成果
TRACEミッションは、以下のような重要な成果を得ました:
- コロナの加熱問題の解明:TRACEは、太陽コロナの加熱メカニズムに関する詳細なデータを提供し、コロナの温度が突然高くなる理由について新たな知見をもたらしました。
- 磁気リコネクションの観測:太陽フレアや冠状ループの形成における磁気リコネクションの役割についての具体的な観測データを取得しました。
- 太陽のダイナミクスの高解像度画像:TRACEが提供した高解像度の画像は、太陽の表面や上層大気の精細な構造を観察するための新たな基準を確立し、研究者にとって貴重な情報源となりました。
TRACEミッションは、太陽物理学の分野で重要な役割を果たし、多くの新たな発見と研究の基盤を提供しました。