ようこう

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Yohkoh (SOLAR-A)

ミッションの解説

概要

「ようこう (Yohkoh, SOLAR-A) 」は、宇宙科学研究所が主導し、日米英の国際協力で開発された、X線太陽観測衛星です。ミッションの主な目的は、太陽活動極大期における太陽フレアの観測と、太陽フレアに関連する太陽コロナの物理現象の観測です。1991年8月30日に鹿児島宇宙空間観測所 (現：内之浦宇宙空間観測所) から打ち上げられ、2004年4月23日に運用を終了するまで、太陽活動を継続的に観測しました。

衛星の重量は約390 kg、形状は 1 m x 1 m x 2 m の直方体で、折りたたみ式の太陽電池パネルが2枚装備されています。近地点高度 550 km、遠地点高度 600 km、軌道傾斜角 31度の略円軌道を1周98分の速さで周回しました。

観測装置について

Soft X-ray telescope (SXT)

SXT は、日米の国際協力で開発された，太陽全面を軟X線領域 (0.5-6 nm) で撮像する望遠鏡です。斜入射X線反射鏡により直接太陽像を焦点面に結び、X線CCDを検出器として用いています。6種類のフィルタで太陽を撮像することにより、太陽プラズマの温度・エミッションメジャーなどの物理量を温度解析によって求めることができます。なめらかな反射鏡によって、2.45秒角の高解像度を実現しました。また「ようこう」上に搭載されたマイクロプロセッサにより、フィルタの選択、露出時間，観測領域を自動制御しました。主に太陽コロナの構造動態を高精細に捉えるために使用されました。

Hard X-ray telescope (HXT)

HXTは、64個のすだれコリメータから構成された、世界で初めての「フーリエ合成型」のX線望遠鏡です。64個の空間フーリエ成分を地上のコンピュータを用いて像合成を行います。コリメーター／検出器システムの総有効面積は約70cm2に達し、従来の望遠鏡に比べて一桁高い感度を実現しました。また，4種類のエネルギーバンド(14-23-33-53-93 keV) でフレアの硬X線像をとらえることができ、世界で初めて 30 keV以上の高エネルギーX線領域でのフレア現象の詳細な観測が可能となりました。

Bragg crystal spectrometer (BCS)

BCSは、軟Ｘ線輝線のエネルギースペクトルを高波長分解能で得ることができる観測装置です。ブラッグ反射を利用して、特定の波長のX線 (硫黄イオン: 0.50385 nm, カルシウムイオン: 0.31769 nm、鉄イオン: 0.18509 nm、0.17780 nm) を選択的に検出し、太陽フレア時のプラズマの温度や組成を解析することができます。日英米国際協力で開発されました。

Wide-band spectrometer (WBS)

WBSは、軟X線 (2-30keV) からガンマ線 (0.2-100MeV) に至る広いエネルギー領域の分光観測を行う装置です。これにより、太陽フレアの全体的なエネルギー分布や、各エネルギー領域での挙動を一括して観測することができます。ガンマ線領域のスペクトル計は、宇宙ガンマ線バーストのモニターとしても活躍しました。

得られた成果

「ようこう」は、10年3ヶ月の間、すなわち太陽活動周期の一周期 (約11年) のほぼ全期間を連続観測した、世界初の科学衛星です。太陽コロナが様々な時間スケールで動的に構造を変化させることや、フレアなどの爆発現象が実際にはコロナ内の「磁気リコネクション」現象であることを世界で初めて発見し、太陽物理学の理解を大きく進展させました。

参考文献